INTERVIEW LIVE ARTIST

TOPINTERVIEW 清水ミチコさん

好きなライブを観に行くまでの行程が、
人生を輝かせてくれる。

タレント清水 ミチコさん

モノマネ女王として、お茶の間からコアなお笑いファンにまで、笑いと感動を与え続けている清水ミチコさん。コロナ禍ではYoutube活動にも取り組まれており、その功績から「第13回伊丹十三賞」を受賞。もちろんライブへの情熱は変わらず、年末にかけて全国ツアーが控えているそうです。そんな清水さんにとって、ライブの魅力とは?

自身のスタイルに大きな影響を与えた、タモリさんのコンサート。

ほかのアーティストや表現者の方のライブを観に行かれることはありますか?

ライブは大好きなので、誘われたらどんどん行きます。誰かから聞いたのですが、やる気が出ない時に効果的なのは、励ましの言葉や名言集を読むことではなく、やる気のある人間を観に行くことが一番らしいです。そういえばライブへ行った後って、ものすごくやる気になりますよね。私の場合は、その人のモノマネをしたくなっちゃうので、すぐにカラオケへ行きたくなりますが。いずれにしても、「何か行動したい!」という気持ちが湧いてきて、自然と元気になれるというのは、ライブがもたらしてくれる効能だと思います。

これまでに観客として参加されたライブの中で、とくに印象に残っているものはありますか?

10代の時に行った、タモリさんのコンサート。完全に雷に打たれたといいますか、その時までは、お笑いと音楽の両方を楽しんでやっているライブを観たことがなかったんですよ。自分の中では、音楽はミュージシャン、お笑いは芸人だと思っていたので、「両方できるんだ」と思って感動しました。そして、なにか近いものを感じたのかはわからないですが、あんな風になりたいと心から思いました。観客席で、ひとりで腕を組んで「やるぞ!」と誓ったことは今でも覚えています。

その体験が、ご自身のパフォーマンスの原体験になったということですね。

やっぱりタモリさんがやられてきたことというのは、当時業界でも珍しかったんですよ。大抵は、音楽かお笑いのどちらかに寄ってしまうので。でもなによりの教訓は、タモリさんは人を励まそうとか、不況に負けないでやっていこうとか、アジったり(煽動したり)することはないんですが、自分自身が楽しんでいるだけでこんなに観客側まで楽しい気持ちにさせることができるという驚きでした。あとは、誰にでも弾けるチック・コリアとか、ピアノの漫談みたいなものをやられていたんですが、そういう音楽をこんなに大きな会場で演奏できるということも素晴らしいと思いました。それ以来、自分の心に大きな金字塔を打ち立てられたような気持ちです。

感情を共感できるのがライブ。お笑いにはとくにそれが大切。

清水さんにとって、ライブの魅力とはなんでしょうか?

なぜかは知らないのですが、ちっちゃい頃からモノマネと手品はライブの方が合うと思っていたんですよ。テレビでも観ることはできますが、驚いたり、笑ったりをみんなと共有できるのはライブですよね。そういう意味では、すごく良い場所だと思っています。じつは、以前はお客様とひとつになるとか、そういうことを言う人間ではなく、どちらかと言えば、自分のためにやっていきたいというタイプでした。ですが、ライブの経験を積んでいく中で、みんなとひとつになって同じ気持ちになるということが大事だと気づいたんです。

とくにお笑いというのは、共感するというのが一番の肝なんですよね。たとえば小池百合子さんに関して、みんながこういうことを感じているよねと、共感するからこそ、わたしのモノマネを観てホッとして笑い合えるわけです。それを確認し合うのは、テレビでは難しいですし、ライブだとシニカルなネタも軽く冗談として受け入れてもらえるのは貴重だと思いました。

ライブの準備には、どのような思いで臨んでいらっしゃいますか?

わたしの場合は今まで「絶対にやるぞ!」「がんばるぞ!」と思った時に限って、ものすごくハズすんですよね(笑)。それなのに、ちょっと気を抜いた感じで出るとすごくうまくいくんですよ。だから、とにかく自分の肩の力を抜いてステージに登るようにしています。人間は、どうしても人前に立つとがんばっちゃうんですよ(笑)。でも、それだと自分だけのよろこびになってしまうので。一緒の気持ちになるためには自分がラフでいた方が良いですし、でないとみんなが緊張しちゃいますよね。「さぁ、笑わせるぞ!」じゃなくて、自分が笑ったようにリラックスしている方が良いんです。

新人の方を見ると、よく思いますよ。「あ、肩に力が入り過ぎている」って。でも、新人のうちなら、まだかわいいんですけど、中年を過ぎてから力が入ってると「学べよ!」ってツッコミたくなりますよね(笑)。わたし自身も若い頃に、たくさん本を読んでリラックスする方法について研究したんですよ。呼吸法を実践したりもしたんですが、一番はジャンプすることでした。ジャンプしていると血が下がって、カーッとなったものが抜けていきます。でも端から見たら、本番前にものすごく盛り上がっている人みたいですごく恥ずかしいんです。「あいつ、今日も張り切ってるな」って。違うんですよ(笑)。

ライブは、人生を輝かせてくれるもの。

これからのライブ産業は、どう変化していくと思いますか?

ライブはもとに戻っていって、もっと上の位置になるんじゃないかと思っています。気軽に行けないことで、希少価値が上がったような気がするんですよ。わたしは男性のアイドルに夢中になったことは一回もないんですけど、たとえば、BTSやジャニーズに夢中になっている人は、やっぱり年齢に関係なく若いですし、きらめいていますし、「この目標のためにわたしは生きる」と、目標が明確だから明るいんですよ。そういう意味でも誰かを好きになることや、何かを観に行くことは、すごく大事なことだと思いました。自分が応援しているようで、じつは応援もされているような……。あ、今めちゃめちゃ良いことを言いましたよね。

Youtubeチャンネルの方も好評ですし、今年の7月には伊丹十三賞も受賞されていました。今後、なにか挑戦されてみたいことはありますか?

挑戦ではないですが、やっぱりお客さんが声を出せるようになったらいいな、というのが一番ですね。あとは久しぶりに満席を見たいです!

最後に、生の公演を愛する方々へメッセージをお願いします。

テレビが楽しみだという人生よりも、ライブが楽しみだという人生の方が、想像してみた時にやっぱり輝いていると思うんですよ。それがなぜかと考えてみたら、ライブへ行くには交通費がかかりますし、チケット代もかかりますし、着替えたり、立ち上がったりという色々な工程がありますが、それ以上のものを返してくれるのがライブなんですよね。それに、自分が選んだ肯定感のようなものも感じることもできますよね。ですので、これからもぜひライブを観に来ていただきたいです。もちろん、わたしも観るつもりです!

清水さんのモノマネは、画面越しに観てもおもしろい。シニカルで、言葉選びが巧みで、どこか愛らしい。だからこそ、もっと次を観たいという気持ちにさせてくれます。そして、のめり込んでいった結果、最終的にライブへと行き着くのでしょう。TVや配信でこれだけ最高の芸を見せてくれる方の渾身のライブに、興味が止まりません。

清水 ミチコさんタレント

岐阜県生まれ。愛称は“ミッちゃん”と“シミチコ”。1983年に、クニ河内のRKB『ラジオ・ギャグ・シャッフル』の構成や出演で話題を呼ぶ。1986年には渋谷のライブハウスで初ライブを行い、その翌年より伝説のバラエティ番組『笑っていいとも』のレギュラーに定着する。“モノマネの女王”と呼ばれ、ピアノの弾き語りやモノマネ、顔マネなどが人気。Youtubeチャンネル『清水ミチコのシミチコチャンネル』も好評。

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